スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

食中毒の変遷 ウエルシュ菌

220 2010年7月18日
食中毒の変遷 ウエルシュ菌
わが国におけるウエルシュ菌食中毒事件数は年間20~40件程度で、それほど多いものではありません。しかし、1事件あたりの患者数は78.3名(2009年)で、他の細菌性食中毒に比べ大規模事例の多いのが特徴です。ウエルシュ菌は、ヒトや動物の大腸内常在菌であり、下水、河川、海、耕地などの土壌に広く分布します。
食中毒の発生場所は、大量の食事を取り扱う給食施設や仕出し弁当屋、旅館、飲食店等である。主な原因食品には、カレー、スープ、肉団子、チャーシュー、野菜の煮物(特に肉の入ったもの)などです。

原因は大量に加熱調理された後、そのまま数時間から一夜室温に放置されていることが多い。加熱調理された食品中では、共存細菌の多くが死滅するが、ウエルシュ菌芽胞は生存します。加熱調理された食品の中心部は酸素の無い状態になり、嫌気性菌のウェルシュ菌にとって好ましい状態になります。ウエルシュ菌の至適発育温度は43~47℃と他の細菌よりも高く、増殖速度も速いため(分裂時間は45℃で約10分間と短い)、加熱調理食品が徐々に冷却していく間にウエルシュ菌は急速に増殖します。
食品の中で大量に増殖したウェルシュ菌が食べ物とともに胃を通過し、小腸内で増殖して、菌が芽胞型に移行する際にエンテロトキシン(毒素)が産生され、その毒素の作用で下痢などの症状が起きます。
一度に大量の食事を調理した給食施設などで発生することから「給食病」の異名もあり、患者数の多い大規模食中毒事件を起こす特徴があります。
最近、食中毒とは異なる感染経路で発生するウエルシュ菌集団下痢症も報告されています。高齢者福祉施設で発生する事例が多く、院内感染と認められた例もあります。これらの事例では、症状は軽度の下痢、患者発生は持続的であり、食中毒と異なり、患者発生の鋭いピークが認められないのが特徴です。

1998年ある老人病院から電話で「入院患者が下痢をしている。食中毒だろうか」という相談がありました。一応調査してみようということになり検便を実施したところ、全員からウエルシュ菌が検出されました。普通の食中毒ならこれで食中毒となるのですが、ウエルシュ菌は高齢者ならほとんど持っている常在菌です。そのウエルシュ菌が病原性を持っているかを調べると半数が毒素産生菌でしたので、下痢症状の病因物質はウエルシュ菌と判明しました。
症状のある方の病棟毎の分布に差がなく、発症時間はほぼ同じ時間に集中し、単一暴露でしたので、病院給食による食中毒が疑われました。保存食を検査したところ、前日の朝食のマグロフレークのごま煮からウエルシュ菌(毒素産生菌)が検出されました。なお、当時の検査技術では食材からウエルシュ菌(毒素産生菌)を検出することは難しいことでした。これで、原因施設と原因食が確定しました。

食中毒を起こした原因は、マニュアルには前日調理を禁じているにもかかわらず、前日の午後3時頃から仕込みをはじめていたことにありました。しかも、回転釜に調理した大鍋を入れて冷却したのですが、回転釜の底は丸くなっているため大鍋の底部一部しか水が当たらず、中心部が冷え切らない状態で一晩放置してしまったのです。ウエルシュ菌の芽胞は、100℃4時間以上の加熱でも死滅しません。中心温度が20℃~50℃で嫌気性雰囲気の状態で芽胞が発芽して増殖型となり、増え始めます。
一晩放置した鍋は翌朝再加熱するのですが、大鍋のため十分に熱が行き届きません。さらに、老人病院は熱い食事は食事介護があるため嫌いますので、再加熱というより暖めるという感覚です。しかも温蔵配膳車の温度も低めに設定されていて、ウエルシュ菌が死滅するまでの温度には上がっていませんでした。マニュアルには前日調理禁止や冷却の方法を書いてはいますが、現場にその意味が十分に伝わっていなかったことが、食中毒の原因です。病院給食を専門とする会社で、立派なマニュアルは完備していますが、現場にはよく伝わってなく、マニュアル通り実行できないことあっても改善や対策が話しあわれていませんでした。

同じ年に起こったウエルシュ菌食中毒は、レストランのバイキング料理の「ソーセージと鶏肉のトマトソース煮」が原因食でした。ウエルシュ菌が繁殖した原因は、バイキング型式で固形燃料加熱式の湯煎に入れ50℃程度で加熱しながら提供していたことにあります。閑散時には長時間この状態が保持されるため、ウエルシュ菌の芽胞が増殖したものと推定されました。湯煎で提供する料理は継ぎ足しを止めて新しいものと交換するか、しっかり再加熱をしてから提供することが不可欠です。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

consalmasa

Author:consalmasa
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。