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食中毒の変遷 腸炎ビブリオ菌

214 2010年4月18日
食中毒の変遷 腸炎ビブリオ菌
食中毒の原因となっている食中毒菌やウイルスといった病原微生物の勢力分野が変わってきています。私が最初に食品衛生監視員となった頃は腸炎ビブリオと黄色ブドウ球菌でした。その後腸管性大腸菌O157、サルモネラ菌が多発し、現在はキャンピロバクター菌とノロウイルスです。予防対策が進みある程度押さえ込み激減した病原微生物があります。そこで食中毒菌やウイルスに着目して、私の経験した食中毒事例について時代変遷を書いてみます。

 私が福岡市の保健所に最初に配属となったのは1978年博多保健所の衛生課でした。その頃の食中毒事件は腸炎ビブリオ菌と黄色ブドウ球菌がほとんどでした。最初の大きな食中毒事件は管内のD寿司屋の腸炎ビブリオ食中毒事件でした。あるホールで開催された小唄の発表会に出したチラシ寿司弁当が原因でした。100名を越える発症者で、出席者には博多の財界人も含まれていました。発生原因は施設での2次汚染です。寿司屋ですから魚介類を扱っていますので、魚に付着している腸炎ビブリオ菌は調理場に入りこみ、手指や調理器具により2次汚染をおこします。通常の営業であれば、魚を捌いてから喫食までの時間が短く、冷蔵庫で温度管理もしていますので大丈夫ですが、施設・設備能力を越えて注文を受けたため、仕込みが早く調製してから喫食までの時間が長く、温度管理が十分でないため腸炎ビブリオ菌を増殖させてしまったのです。つまり、「つけない」「ふやさない」の食中毒予防3原則が十分に守られてなかったことです。
腸炎ビブリオ菌は好塩菌のー種で、沿岸の海水中や海泥中にいます。1日の最低気温が15℃以上、海水温度が20℃以上になると海水中で大量に増殖し、魚や貝に付着して陸上に運ばれます。海水とほぼ同じ塩分(3%前後)で発育増殖しますが熱や酸に弱く、真水の中では生存できません。一般の細菌は普通30分から45分で分裂して増えますが、陽炎ビブリオは、条件さえ良ければ10分たらずで分裂し増殖します。発生時期は7月から9月の夏場に集中します。潜伏時間は約6時間から32時間で、激しい腹痛、下痢などが主症状です。食中毒予防ポイントとして、魚介類は、調理前に流水(真水)で良く洗うこと。魚介類を真水で洗う事が菌を減らすことで、それからお客さんが食べる迄の時間とその関の温度管理が大事です。
私が2003年再度博多保健所の転勤になった頃、D寿司屋のM社長は寿司料飲組合の組合長でした。福岡市は毎年6月に料飲組合単位に食品衛生講習会を開催します。私が寿司料飲組合の講習会の講師でいくと、M社長は必ず主催者挨拶でこの食中毒の実体験を語り、食中毒を起したらいかに大変かをお話ししていました。組合全体で食中毒防止に取り組んでいただきました。

腸炎ビブリオ食中毒事件で思いだすのは、1999年福岡市内で同時期に多発した食中毒事件です。1週間に福岡市内で11件、福岡県管轄の郡部でも発生し、福岡県からも情報が寄せられていました。提供食品に生ウニがありました。しかし、生ウニから菌が検出されたわけでも詳しい喫食調査で生ウニが原因と決まったわけでもありませんので、しかし、全てに同一国から輸入された生ウニがありましたのでその生ウニの疑いは濃いのです。食中毒は広がりを見せています。原因食を明確に絞り込まずに「生ウニが危険」と発表すると風評被害で国産や他の国からのウニに影響しますのでマスコミを通して発表することはできません。そこで、すでに博多保健所独自に実施していたFAX通信で情報を流すとともに、生ウニの提供が多い管内の寿司屋、料理店に係員全員で、その国から輸入した生ウニの提供に注意するよう電話をかけました。意図を汲んでいただいて、該当する生ウニの提供を止めていただきました。さらに自然発生的にその情報は市内の同業者に流れていました。一般消費者には流れていませんので風評被害もなく生ウニによる腸炎ビブリオ食中毒の発生は止まりました。
生ウニのように産地や流通過程で汚染し増殖したものは、お店だけでは食中毒を防ぐことが出来ません。生産者の衛生管理のチェックや輸入段階の検査が重要で、生産、流通、販売、調理のつまりフードチェーンで各段階の衛生管理が重要です。

以前「なぜ、腸炎ビブリオ食中毒は減少したのか? 」という記事を書きました。
http://www32.ocn.ne.jp/~abcq/mag1-148.html
近年日本では、その腸炎ビブリオによる食中毒は激減しています。食中毒事件数と食中毒事件総数の腸炎ビブリオの割合の推移を見ると、1998年は839件、27.9%、2000年は422件、18.8%、2006年は71件、4.8%です。
腸炎ビブリオ食中毒の減少に寄与したのは、基準の改正です。2001年、「腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に係る規格」が改正になり、加工基準、保存基準、表示基準が制定され、「加工に当たっては、飲用に適する水を使用すること、ただし、海水を使用する場合は、殺菌海水または人工海水を使用すること」と決まりました。私の推測では、加工に当たっては、飲用に適する水を使用することが激減した大きな要素だと思います。
それまで、「つけない」「ふやさない」「殺す」の食中毒予防3原則は農水省関連の施設の衛生管理には言い及ぼしてなかったのです。縦割り行政の壁がありました。
食中毒菌は生息場所や性質が異なります。個々の食中毒菌毎に“From Farm to Table”でリスクの高まる個所を見つけ、発生源対策とリスクコミニケーションを行なうことで、食中毒は減らすことができることを一連の腸炎ビブリオ対策は実証しています。



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