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真空包装は万能ではありません

146 2007年7月1日
真空包装は万能ではありません
 「宮崎の地鶏で食中毒 家族ら7人、ネットで注文」----。6月7日、共
同通信でこんな配信がありました。東国原英夫知事の人気で全国的に有名になった宮崎地鶏ですが、その真空パック入りの刺し身を5月にインターネット販売で購入し、食べた家族ら7人が食中毒になり、7人のうち4人の便から食中毒の原因菌カンピロバクターが見つかったという事件でした。宮崎県は「子供や高齢者は生では食べないように」と呼び掛けているとありました。

 真空包装は安全だと思っていませんか。真空包装をレトルト食品と勘違いし、保存性が高く衛生的だと思っている人が多いようです。レトルト食品は包装後120℃以上で殺菌し芽胞菌まで殺しています。形態は同じでも真空包装入り地鶏の刺し身は高温で殺菌しているわけでなく、酸素が少ない状態にしているだけのものです。病原微生物は酸素が嫌いな菌も、加熱に強い菌もあり、真空包装すると繁殖しやすい環境となり、リスクが増すこともあります。

 真空包装に関係する事例では1984年熊本で発生したからしれんこん事件が有名です。真空包装されたからしれんこんのパックの中で、嫌気性菌であるボツリヌスが繁殖し、36人が中毒症状に陥り、そのうちの11人が死亡しました。この食中毒は、真空包装した商品でのみ起っています。

 カンピロバクター菌は家畜、家きんまたはペットの腸管内に存在する微好気性菌で、空気が少ない状態を好みます。そのため、真空包装ではこの菌が増殖しやすい環境となります。

 私の保健所勤務時代、続けて2件カンピロバクター食中毒事件が発生しました。そのうちの1件は、ラップにしっかりと包んだ鳥刺しから菌がたくさん検出されたのです。次の事件では原因食は特定されませんでしたが、食材を真空包装機で脱気していましたので、調理場で2次汚染し増殖したものと推定されました。

 両事件から、カンピロバクター菌は空気に弱いので鶏肉はできるだけ空気に触れるように保存する方が、鶏肉の表面のカンピロバクターを減らすことができ、鶏肉を扱った手からのニ次汚染のリスクを減らすことができるということを学んだものです。

 06年の病因物質別食中毒発生状況をみますと、ノロウイルスが499件、2万7616人でトップ、第2位がカンピロバクター416件、2297人となっていて、依然としてカンピロバクター食中毒が多く発生しています。カンピロバクター食中毒は潜伏期間が3日から5日と長く、1人や2人といった散発事例が多くて原因食の特定が難しいのですが、市販の鶏肉の汚染状況から、生食用食鳥肉を原因とする食中毒が多いのではないかと推定されています。

 カンピロバクター菌は、鶏の腸管内に生息していますので、食鳥処理の段階で作業員の手や器具、内臓との接触などで鶏肉の汚染が始まることは容易に推定できますし、カンピロバクター食中毒の件数が減らないのは食鳥処理場の衛生対策が難しく、十分でないことを示しています。

 「食品衛生研究」07年6月号に、全国食品衛生監視員研修会で鹿児島県加世田保健所の岩屋あまね氏が発表した「生食用食鳥肉の衛生管理について」が載っていました。そのまとめによると、「生食用食鳥肉の汚染調査を行なったところ、多くの生食用食鳥肉が微生物に汚染されている。小規模食鳥処理場について調査したところ、処理工程に問題が見つかった。処理工程で病原微生物の汚染を最小限に食い止め、喫食までの微生物増殖を防止することが肝要である。食鶏肉を65℃の温湯または酸性電解水で二次処理することで効果的に殺菌できることが確認できたが、あくまで二次的な衛生管理対策として有効である」とありました。

 一般的な食品衛生の取り組みは、地域の食品衛生監視員が現場に入ってふき取り検査などで検証しながら、現場の人と一緒に対策を検討します。汚染防止の改善策として、処理工程の順序の変更、たわしの使用禁止、前掛けの交換、手洗いの励行などの基本的衛生管理による汚染防止対策と効果的殺菌方法の研究を行うことで、一定の成果を上げることができます。きちんと衛生対策を取ることで、カンピロバクター菌による汚染が少ない生食用食鳥肉が出来ることも立証されています。この衛生管理方法を今以上に普及させて、是非とも安全な生食用食鳥肉を提供してもらいたいものです。

 一方、生食用食鳥肉を使用する飲食店における問題は、講習会などを通じてリスク情報は十分に伝わっているはずなのに、取り組みがおろそかになっていることです。行政は「子供や高齢者は生では食べないように」と説明していますが、飲食店ではリスクを認識せずに提供しているのです。それと安全な生食用食鳥肉を見分けることができないことも災いしています。多くのカンピロバクター食中毒は喫食調査で原因施設が特定されるため、飲食店や食肉販売店が行政処分を受けています。しかし、原因食が特定されないため、食鳥処理場は証拠不十分で何の処分も指導も受けません。これが最大の問題ではないでしょうか。だから生食用食鳥肉の安全対策が進まないのだと思います。

 食品安全委員会には、「食品安全モニター」という制度があり、食品の安全性などについて意見などを出すことができます。今回私も応募して食品安全モニターに採用され、6月12日に福岡市で食品安全モニター会議がありました。そこで、「農薬や食品添加物といったリスク評価だけでなく、現実に健康被害が多発している食中毒、特にカンピロバクター、サルモネラ菌に対するリスクの再評価を行い、生産から消費までの工程のどの部分がリスクが高いのか、リスク低減個所を明らかにしてリスク管理を行なう農林水産省や厚生労働省に勧告してください」と、意見を述べたところ、「食品安全委員会は通常、リスク管理の省庁から依頼があってからリスク評価を行なうのですが、カンピロバクター、サルモネラ菌に対するリスク評価は『自ら評価』というに形で取り上げてリスク評価を行なう計画です」と答えてくれました。私が心配に思っていたことが、奇しくも「自ら評価」の対象となったことに、食品衛生マンとして嬉しく思いました。

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