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食中毒をケースメソッドで授業する

130 2006年11月5日
食中毒をケースメソッドで授業する
先月末、東京海洋大学大学院の海洋科学技術研究科で「食品流通安全管理特別講義?」という講義をさせていただく機会がありました。テーマは「食中毒対策~対応から予防へ~」です。なぜ私が大学の講義にお声がかかったのかといいますと、実際に食中毒事件にタッチしてきた元食品衛生監視員の生の声を学生に聞かせて、食品衛生について学んで欲しいという大学側の意向があったからのようです。

 授業は、米国のビジネススクールで採用されているケースメソッドという方法です。ケース(事例研究素材)では、ある具体的な事実に即した「事件」を詳しく解説します。そこに「主人公ともなる登場人物がいて、コレコレこういう事態に即して何を基にどう考えて何をしたのか。その結果どうなったのか。問題は何であり、どこまで解決できたのか」というよう内容の文書を作ります。

 学生はこの資料を事前に読んできて、自分が主人公だったらどう判断するかについて考えてきます。授業ではまず、数人のグループで意見を出し合って討論します。次いで、全体討論を行い、他人の意見を聞きながら自分の意見を修正し、教員が討論をリードして、まとめて行くというものです。

 授業では、福岡市で発生したサルモネラ食中毒事件について書いた拙者「保健所の片隅から」を事例として使い、もし自分が食品衛生監視員なら、何をすべきか、何ができるかを学生に考えてもらいました。

 学生さんの討論を聞いていて、実務経験がないので当然なのですが、保健所や食品衛生監視員の仕事の実態がよく把握できていないことが分かりました。「汚染した卵の追跡調査や養鶏場の指導を厳重に」とか「施設の監視をもっと強力に」や「施設の抜き打ち調査や厳しい取り締まる」という意見が多く出ました。

 食品衛生は警察行政から始まりましたので、取り締まりを期待されますが、広く食の安全を確保するためには、消費者の啓発事業も重要になり、営業者の自主的な管理を進める指導や情報提供に重点を置かなければなりません。また、養鶏場の指導については農林部局の担当で、調査依頼はするのですが縦割り行政でうまく機能していません。原因追求だけに頼ると壁にぶつかるのです。

 私は授業で、討論の中で出ていた疑問点や間違っている点を含めて説明しました。予め学生に資料やケース(事例研究素材)を事前学習させてグループ討議をし、それを聞いて、話を組み立てる方法は、従来の聞くだけの講義よりも効果的だと感じました。

 私が学生さんに一番お話したかったのは、既存の手法で行き詰まった時は、立ち止まって「何のためにしているのか」とその業務の目的を考え、「こうなったら良い」とあるべき姿を思い浮かべ、その方向に向かって今までと違うユニークな方法を取ることです。

 通常なら食中毒事件は下痢、嘔吐の原因が何かという病因物質を特定し、確かにその食事を提供した店が原因なのか、つまり原因施設を特定し、何を食べて起こしたかという原因食を調査し食中毒が発生した要因を探ります。しかし、日にちが経過していることが多く原因食や発生要因は明確にならないことが多いのです。原則として原因施設を特定すれば、拡大防止、再発防止策を講ずるために営業停止等の行政処分を行い、施設の消毒や指導を行い、食中毒事件報告書を書いて一件落着となります。

 食中毒事件を処理する過程で、営業者と話したり、検査結果の解析などで食中毒の発生要因を推定することはできます。それは食中毒を予防するノウハウになります。しかし、その発生要因はその食中毒事件の原因だと断定できませんので、マスコミでは発表できませんし、発表したことで風評被害が起きると大変です。情報の伝え方が難しいのです。

 また、定例的な食品衛生講習会は幅広い業種を対象として、現場の人が主体で必ずしも経営者や責任者に情報が伝わりません。食中毒は調理場だけでは解決しないのです。トップにノウハウの情報を伝える必要があります。前例にならうだけでは、解決できないのです。そこで業務計画にはないのですが、私は関係業種のトップ向けに緊急食品衛生講習会を開催したり、ファクスやチラシでこのノウハウを伝えることにしました。

 食品衛生法の目的に、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止する」という項目があります。食中毒菌の性質により、食中毒を防ぐ方法が若干異なることがあります。問題となる病因物質も時代によって変わります。私は、関係者に直接届くタイムリーな情報発信こそが効果的な手法だと信じています。

 学生さんの討議を聞いていて、衛生管理についての知識は事業者の人もあまり変わらないのかもしれないと思いました。事象所の衛生責任者は、現場で何をしたら良いのか、これで良いのか、自分の施設の衛生水準はどれくらいなのか、不足するところはないのかを知ることが大切だと、改めて思った次第です。
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