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サルモネラ食中毒死亡事件発生で見直したいリスク評価

126 2006年9月3日
サルモネラ食中毒死亡事件発生で見直したいリスク評価
 今年6月のこと、面識のない医師から私にメールが1通届きました。食品衛生コンサルタントとしての活動をネットで情報発信していることから、それを見てくださったのかと思います。実はその医師、鶏卵を食べてサルモネラ食中毒に起因する急性脳症で6月20日に亡くなった小学生女児の担当医師だったのです。

 まずは、その医師のメールを紹介しましょう。

 「前日に卵ご飯をたべ、翌朝から嘔吐下痢があり、夕方から意識障害、その翌朝にはけいれんし、昏睡ほぼ脳死状態という小学生の症例について、お聞きします。

 サルモネラ・エンティリティディス(SE)が検出され、卵ご飯をたべなかった妹は、姉が卵ご飯の卵をといたお椀で何か食べたようで、発症日も少し遅れ軽症で済みましたが、下痢発熱があり、SEを検出。パックの卵は、母親も父親も卵ご飯で食べており、症状なし。残りの卵も培養陰性でした。

 米国では「殻付き卵の生食は危険です」とCDC(米国疾病予防管理センター)は明言しています。また、殻付き卵の滅菌方法も確立されて製品化され、「生卵が必要なら、滅菌卵を使え」と言っています。

 私は、今回の事件で卵を販売した小売店が同定できれば、生産者の責任は免れないと思います。そうでなければ、卵の生食は危険であると表示すべきです。この問題についてご意見をお聞かせ願えれば幸いです」(表記など一部を編集部で変更)

 私は、日本のスーパーで死に直結する危険な食品が売られていた事件として、忌々しい問題だと捉えています。卵を販売したスーパーや養鶏農家などを調査したが菌は検出されなかった(原因不明)との簡単な発表だけにとどまり、「食の安全」の根幹を揺るがすような大きな事件なのに、その後の動きも伝わってきません。マスコミは、行政が発表した事件を伝える1報だけで済ましています。

 牛の病気のBSE(牛海綿状脳症)や鶏の病気の鳥インフルエンザにはあれだけ大騒ぎした一方で、市販の鶏卵を食べて日本人が亡くなっていることについては、「菌が検出されませんでした」だけですか。日本では、日本で食べた牛肉でvCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)の患者は発生していませんよ。

 サルモネラ食中毒は、BSEや鳥インフルエンザと違って発生原因の解明やその対処方法などに十分な経験があるのですから、死亡事故に至ったからには徹底的に追及すべきでしょう。

 卵によるサルモネラ食中毒は、1996年、97年、98年と全国的に食中毒が多発し、厚生労働省と農林水産省は卵の生食文化を守るために、食品衛生法で卵の賞味期限表示を決めました。鶏はストレスがかかった時に卵の内部にSE菌が入るインエッグという現象が起こり、その確率は5000個に1個と言われています。

 しかし、鶏卵には菌の増殖を押さえる酵素の働きがあり、一定期間インエッグの卵でも菌量は少ない状態を保つことができ、冷蔵保管や使う直前に割るといった取り扱いをすれば食中毒を起こしません。つまり、賞味期限表示内の卵で取り扱いが良ければ生食は可能としています。それが賞味期限を表示する意味です。

 サルモネラ食中毒のリスクが高まる時期は、気温と卵の需給関係によっ
て、予測できます。つまり、鶏にストレスがかかる時期から2、3カ月保存れた後に店頭に並んだ卵のリスクが高いのです。

 そして、鶏にストレスがかかるのは、梅雨時から9月までです。この時期は非常に蒸し暑い時期です。鶏も人間と同じように夏バテしてしまい、飼料(エサ)を食べる量が減って、水を多く摂取します。そのため濃厚卵白(白身でもプルンとしている部分)の比率が下がり、水様卵白が増えてしまうのです。

 卵白(特に濃厚卵白)は非常に優れた性質を持ち「リゾチーム」という酵素で雑菌を死滅させる能力を持っています。この濃厚卵白が減ってしまいますと鶏卵自体の鮮度(ハウユニット)が急激に落ちて雑菌に対する抵抗力が落ち、いわゆる食中毒菌の侵入や腐敗に繋がるのです。

 例年、卵の需要が多く、価格も高いのは暮の12月です。そこに生産も合わせてヒナを育てます。そのヒナが産卵を始めるのは8、9月です。また、夏場は卵の消費が落ち、生食用は生産過剰となり、在庫が長期に及ぶのです。

 年が明けて卵の需要が落ちる頃に養鶏場は、生産調整と鶏の生産力アップのために強制換羽といって、鶏に水だけで餌を与えない時期を設定します。一定期間後に再び餌を与えると、生命の危機を感じた鶏は生殖活動を活発化して産卵が増えるそうです。ただし、強制換羽時期の卵はインエッグの確率が高まり、一定期間保存された卵が出回る3、4月にサルモネラ食中毒のリスクが高まります。

 今回、亡くなった小学生女児は4月7日に卵を食べています。まさにサルモネラ食中毒のハイリスク期間でした。当局は、「スーパーや養鶏農家などを調査したが菌は検出されなかった」と発表していますが、インエッグの確率は5000個に1個ですから、鶏卵を検査しても菌が検出されなかったのは当然でしょう。

 私が疑問に思い、知りたいことは(1)該当する養鶏場での強制換羽はどうなのか(2)加熱加工用の鶏卵が生食用に混入してないと証明できるのか(3)どの程度SEの検査をしたのか(3)鶏の保菌状態はどうだったのか 全鶏検査はしたのか----ということです。

 もし販売店や養鶏場に原因がないとしたら、生食用の鶏卵のリスク評価を見直す必要があるのではないでしょうか。このことを食品安全委員会事務局宛に私の意見としてファクスしましたが、今のところ何も返事がありません。
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