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なぜ、腸炎ビブリオ食中毒は減少したのか?

148 2007年8月5日
なぜ、腸炎ビブリオ食中毒は減少したのか?
 前回は、カンピロバクター食中毒について書きました(関連記事1)。
鶏刺しに関してリスクコミニケーションがいかに大切であるかということと、生産者である食鳥処理場は衛生対策を推進し、食品安全委員会は安全な生食用食鳥肉を提供するというリスクマネジメントを担当省庁に提言するべきだという内容です。今回は、発生源対策とリスクコミニケーションがうまくいき、危害が減少した腸炎ビブリオ食中毒について書きます。

 夏の食中毒の“定番”といえば、かつては腸炎ビブリオでした。夏の暑い太陽がギラギラと照り付け、海水温が上昇するようなとき、魚介類を生食すれば付着した腸炎ビブリオ菌が原因で、猛烈な腹痛と下痢が止まらないという症状に見舞われます。

 とはいえ近年日本では、その腸炎ビブリオによる食中毒は激減しているのです。食中毒事件数とそのうちの腸炎ビブリオの割合の推移を見ると、1998年は839件、27.9%、2000年は422件、18.8%、2006年は71件、4.8%です。もちろん油断してはいけませんが、腸炎ビブリオ食中毒はほぼ押さえ込んだと判断されます。

 では、なぜ、腸炎ビブリオ食中毒はこのように減少したのでしょうか。私なりに、考察してみました。

 今では魚介類の生食はリスクがあり、きちんと衛生管理をしないと危ないよということを多くの人が知っています。そのきっかけとなったのは、皮肉なことに1996年の腸管出血性大腸菌O157食中毒事件の発生でした。当時「生もの」は危険とさかんに言われ、「生もの=魚介類の刺身」の連想で鮮魚店、料理店は売れ行きが落ちたのです。

 腸管出血性大腸菌O157は牛の腸に生息しますので、食肉類や肥料や土壌からの汚染の可能性がある野菜類はリスクは高いのですが、魚介類はO157による汚染の可能性は低く、腸管出血性大腸菌O157食中毒のリスクは低かったのです。むしろ魚介類に多い食中毒菌は、腸炎ビブリオ菌だったのです。

 魚介類がO157食中毒の原因というのは、風評被害だったとも言えます。マスコミの中でも、特にテレビは映像と短いフレーズを繰り返しますので説明が不十分のまま多くの人に伝えるため、風評被害が起こりやすくなります。テレビはリスクコミニケーション手段としてはふさわしくありません。じっくり説明できる食品衛生講習会やこのFoodScienceなどのネットでの情報発信が有効です。

 風評被害ではありましたが、原因はともあれ、魚介類の生食に気をつけるようになったのです。結果的には「生食用魚介類=食中毒」となり、リスクを避けるために多くの関係者が努力を重ねて、衛生管理が飛躍的に向上しました。

 さらに、腸炎ビブリオ食中毒の減少に寄与したのは、基準の改正です。01年、「腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に係る規格」が改正になり、加工基準、保存基準、表示基準が制定され、「加工に当たっては、飲用に適する水を使用すること、ただし、海水を使用する場合は、殺菌海水または人工海水を使用すること」と決まりました。当初、私は鮮魚市場の状況を知りませんでしたので、改正の狙いが良く理解できませんでした。

 05年長崎県の松浦漁港を視察をして、「殺菌海水または人工海水を使用すること」の意味がよく分かりました。漁港は多くの船が魚を積んで集まりますので、腸炎ビブリオ菌など、魚介類に関係する微生物を海水と一緒に運んできます。従って漁港近辺の海水には、腸炎ビブリオが多く棲息しているものと推測されます(関連記事2)。

 改正以前はその海水をくみ上げて魚体やトロ箱や器具を洗浄していたのです。それは、洗浄でなく、腸炎ビブリオ菌を付けていたのかもしれません。特に木製のトロ箱は繰り返し使用し保水性があることから、腸炎ビブリオ菌の増殖場所になる可能性があります。そこに魚を入れるのですから、濃厚に汚染されていたことも否定できません。

 松浦漁港では魚を選別し、滅菌海水で十分洗浄、オゾン水で殺菌し、あらかじめ冷蔵庫で冷やした発泡スチロール箱に氷詰めして、各地の鮮魚市場に陸送していました。この段階で腸炎ビブリオ菌を含む病原微生物を殺し、低温保管できればリスクは低減できます。サバは、「サバの生き腐れ」と言われるほど足の早い魚で、そのサバの水揚げ量が日本一なのが松浦漁港なのです。そこで的確に処理し、流通させれば、腸炎ビブリオ食中毒が減少するのは納得がいきます。

 食中毒菌は生息場所や性質が異なります。個々の食中毒菌毎に“From Farm to Table”でリスクの高まる個所を見つけ、発生源対策とリスクコミニケーションを行なうことで、食中毒は減らすことができることを一連の腸炎ビブリオ対策は実証しています。

 これから夏本番です。腸炎ビブリオに限らず、細菌が繁殖しやすい時期です。くれぐれも厳重な衛生管理を心掛けてください。
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