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マスコミが作る非科学的な感情論

179 2008年11月2日
マスコミが作る非科学的な感情論
 最近、「食の安全・安心」という言葉をよく耳にします。安全は科学的に評価できるものですが安心は心理的に感じるものです。食に対する不安を植え付けたマスコミ報道の影響により不安心理が増大し、実際は危険性が少ない物でも、「危険がいっぱい」のイメージで多くの食べ物の無駄が生じています。

 私は福岡市の食品衛生監視員、その後食品衛生コンサルタントとして長年「食の安全」を守る仕事を続けてきたという自負があります。仕事の基本は、食中毒事例から危害分析で見つけた発生条件を知らせて、食品関係営業者に予め対策を取ってもらうことです。つまり、私の考える「食の安全」は、食中毒による健康被害を防ぐことに尽きます。一般消費者が嫌う食品添加物、農薬は基準値を超えることはほとんどなく、基準値も安全率を多く見ていますので、たとえわずかに超えたとしても、安全です。それよりも食中毒の原因となる細菌やウイルスといった病原微生物の方が危険性は高く、食の安全は病原微生物のリスク管理から取り組むべきだと考えています。

 2007年の病因物質別月別食中毒発生状況を見ますと、総数で1289件、そ
の内訳は細菌732件、ウイルス348件、化学物質10件、自然毒113件となっており、病原性微生物による食中毒事件がいかに多いかお分かりいただけるでしょう。化学物質の含まれた食品を食べて健康被害を起した食中毒は10件発生しています。これをもて「食品添加物や残留農薬のように、やはり化学物質は怖い」と思われるかもしれませんが、このほとんどがヒスタミンによるアレルギー様食中毒です。ヒスタミンは赤身魚に多く含まれているアミノ酸のヒスチジンがヒスチジン脱炭酸酵素を有する細菌の作用で生成されます。したがって、この食中毒は細菌性食中毒と同じ、微生物由来なのです。

 食品添加物や残留農薬は、日本では規制が厳しく、検査や監視も行われており、安全に管理されています。しかし、これらの化学物質は、食品に含まれている量に関係なく危険視されています。化学物質ですから物によっては有害性があります。そのため、発がん性や慢性毒性の試験を行い、人体に影響の無いように使用基準を設けていますし、全国の保健所の食品衛生監視員が目を光らせています。食品添加物を使用する食品メーカー側も消費者が嫌うことから使用量を減らす努力しています。実際に健康被害が出たのは、中国の農薬入りギョーザ事件、中国製冷凍インゲン事件など犯罪性の高い事件ばかりです。

 私は、昨年来の一連の食品偽装事件を見ていて、何となく違和感を覚えていました。例えば07年1月に起きた不二家事件の原因は会社内部の管理のまずさ、製造計画と購入計画のミスマッチで使えない食材が生じたこと、つまり無駄の発生にあると思います。消費期限が切れた牛乳を使用したことが、期限内の食材を使うという社内ルール違反を犯したため問題に発展してしまったと理解していました。安全性については問題ないと思っていました。それなのに食の安全が損なわれたと社会的にとらえられ、そこに和感を感じたのです。

 なお、市販の牛乳は賞味期限30日位ですが、不二家が使用した牛乳は業務用のポリタンク入りのため、5日間以内の短い消費期限を採用していたということす。消費期限内に使うことができないなら市販と同じ賞味期限30日位の牛乳を使えば良いのです。シュークリームを製造する際に牛乳も加熱するので微生物的危害は生じないはずです。不二家は商品のシュークリームに消費期限をつけて保証していますので消費者に向けては問題ないはずです。

 この事件はマスコミが大きく報道したため、消費者に「安全でない物を売った」「だまされた」という怒りの感情が起こり、大きく広がりました。ルール違反を犯したのは事実ですので、その時点でメーカーとしては反論できなくなったのもマスコミでは物事にレッテルを張ったり、タブー視したりする傾向が強く、マスコミによって作られた空気に流され、メーカーは自主的に操業停止、回収、廃棄を行わざるを得ない雰囲気になりました。何か法的な対応以上のことをしなければいけないような空気が出来上がり、数カ月にわたる操業ストップや商品の回収・廃棄と、過剰な経済的負担を強いられたのです。

 私が現役の時も表示ミスやラベルの張替え、期限切れの食材の使用などをした企業はありました。それでも食の安全が確保されていれば営業停止等の行政処分までは行なわず、文書指導や口頭指導でした。当時のマスコミは興味を示さず、報道はされませんでした。もちろん人に対する危害が発生する恐れがある時は、営業停止や回収命令、廃棄命令を出していました。しかし今は、一定のルールもなくマスコミの醸し出す空気がメーカーを必要以上に追い詰めています。

 今、食品業界は、偽装事件を起した企業のせいで信用が失墜してしまいました。この非科学的な感情論に流された空気を変えていくには、個々の企業がこつこつと信頼を取り戻し行くしか方法はないでしょう。
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