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腸管出血性大腸菌食中毒事件と風評被害

242 2011年6月19日
腸管出血性大腸菌食中毒事件と風評被害
 ヨーロッパで腸管出血性大腸菌O104の感染が広がっている問題で、ドイツ保健当局は12日、大腸菌による死者が35人となったと発表しました。世界保健機関(WHO)などによると、これまでの死者はスウェーデンの1人を除き、すべてドイツ国内で報告されました。欧州疾病対策センター(ECDC)による12日時点のまとめでは、感染者は3256人になりました。ドイツ当局は、同国北部ニーダーザクセン州の農場で生産されたモヤシなどのスプラウト(新芽野菜)が感染源となった可能性が高いとして、この農場から出荷された食品すべての回収を指示しています。
 日本の新聞は「もやし」が原因と書いていますが、「スプラウト(新芽野菜)」で、スプラウト(sprout)とは、植物の新芽の総称。日本では主にブロッコリーやマスタード、クレスなどの野菜の新芽を指す(発芽野菜、新芽野菜)。かいわれ大根やモヤシもスプラウトの一種である。日本では「もやし」は加熱して喫食され生では食べません。食中毒の広がりからみて「かいわれ大根」のようにサラダ等に生で食べる野菜です。
 日本の「かいわれ大根」が心配となりますが、1996年月に「かいわれ大根生産衛生管理マニュアル」、2003年に「生鮮野菜衛生管理ガイド」がまとめられました。これはHACCPの考え方を取り入れたものです。この「生鮮野菜衛生管理ガイド」を守っている業者は安全と判断できますので、納品業者に尋ねてください。

 かいわれ大根というと1996年に大阪府堺市の小学校給食で集団発生した腸管出血性大腸菌O157事件では、かいわれ大根が疑われました。当時の菅厚生大臣が「かいわれ大根がO-157の感染源である可能性は否定できない」と発表すると、風評被害で全国的にかいわれ大根が売れなくなり、あわてて厚生大臣が「かいわれ大根」を食べる映像を流しました。
 堺市の場合は、3人の児童が亡くなり、溶血性尿毒症症候群(HUS)が121人でした。食中毒発生6カ月後のフォローアップ腎臓検診結果では、腎機能低下者が6人、検尿異常者が227人いました。
 ほかの食中毒菌に比べ、極めて少ない菌量(100個以下)で感染するのがO157の特徴です。発症者のふん便からは、1g当たり100万個程度のO157が検出されます。健康保菌者もいますので、用便後の手洗いが重要です。潜伏期間が3日から9日と、長いことも特徴として、知っておくべきでしょう。
 その後、○○農園が使用したかいわれ大根の種子からDNAの同じO157菌が見つかり、一旦は厚生労働省は○○農園のかいわれ大根が原因としましたが、裁判では食材のかいわれ大根及び、○○農園からO157菌が発見されなかったためにかいわれ大根犯人説は否定されてしまいました。

 当時、私は食品衛生監視員をしており、大変興味深く事件の推移を見ており、パソコン通信のNIFTYの生活衛生会議室の入り様々な人の意見を聞いたり、意見を書き込んでいました。私は食中毒事件では、事件の状況から該当する菌の生息場所や予想される感染経路、過去の事例等を参考に食中毒を起こしうる食材は何かを考えていました。共通食材といった状況証拠を重視します。食中毒事件では、食材からの菌の検出結果は決め手にはなりますが、患者便からは検出されても想定される食材からは検出されない事が多いのです。
 堺市のO157事件は、献立は堺市学校給食協会の献立委員会で作成し、調理マニュアルを学校保健課で作成し、その献立に必要な食材は、同協会にて調達しています。献立の作成は、2ケ月単位で市内を北・東地域、中・南地域、堺・西地域の3ブロックに分け、運用についてはできるだけ3ブロックの献立が重複しないよう配慮されていました。また、調理は各校自校調理方式で行っていました。自校調理方式でありながら47小学校で同時期に発生しています。O157は牛などの大腸の常在菌です。学校給食の場合、納品業者を複数にします。牛肉が汚染されていたとしても1頭単位です。複数の業者が同じ牛の牛肉を学校に納品する可能性は少ないでしょう。それに牛肉は加熱工程があり、給食室での過熱不足や2次汚染といった調理人のミスが47校同時に起こることは考えにくいでしょう。共通の食材の検討をすると、加熱工程が加わらないものは、「かいわれ大根」「牛乳」「パン」の3点で、このうち、「牛乳」「パン」は複数業者が納入しており、「牛乳」については製造施設に管轄保健所より立入りし、殺菌処理記録が確認されています。「かいわれ大根」のみ生食で使用され同一生産者の物が納品されています。

 NIFTYの生活衛生会議室は、若いドクターがリードしていました。ドクター達は検査結果のみを重視し、疫学を軽視していました。また、外国や過去のO157事例は知らないため事件の推理が出来ませんので、検査結果至上主義です。しかし、当時のO157菌の検査はPCR法が普及してなかったので培養法です。患者便はお腹で増殖していますので検出されますが、食材からの検出は菌量が少なく、培養法での検出は非常に難しかったのです。
 食材からO157を検出事例が厚生省のHPにあり、
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/jokyo/o157rei.html
 堺市の食中毒事件以前に食材からO157菌が検出されたのは1例だけです。同じ年の7月に4番目、5番目が福岡市の事例で、私が収去した市販の牛の内臓肉からの検出になっています。
 それと報道を見ていると当時の堺市の担当部局は、大量の検便検査と施設検査に忙殺され、原因追求の調査が遅れているようでした。食品衛生上の調査は事件の拡大を止めて、再発防止といった公衆衛生上の観点が主目的ですので、事件の状況から判断して○○農園の立ち入り調査や同農園のかいわれ大根の検体の確保を急いで行っていれば違っていたのかもしれません。司令塔がうまく機能してなかったのかもしれません。状況証拠とアメリカでの新芽野菜によるO157食中毒事例を考慮して、出荷停止や回収命令を出しておけば、その後の数件の事件も防ぐ事ができ、風評被害も抑えられたのではないかと考えます。同日、老人ホームに出荷されたかいわれ大根でO157事件が発生し、DNAパターンも小学校給食の事件と一致しました。
裁判は「疑わしきは罰せず」で決定的な食材からの菌の検出が必要なのでしょうが、公衆衛生上は「疑わしきは速やかに止める」ことです。また、風評被害の広がりを伝えるマスコミ報道で事件めぐる空気が変わってしまいました。
 
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